弁護士記事

統計偽装!?

「統計」は日常生活にも影響する重要な指針

 公的な「統計」が信頼できるかどうか。普段の生活の中で「統計」を意識することはほとんどないですが、実はこれは私たちの生活にもかかわる大問題です。

 国の政策は、統計データをもとに検討、立案され、成果のチェックも統計データをもとに判断されます。統計は、国家運営にかかわるPDCAサイクル(Plan (計画), Do (実行), Check (評価), Action (改善))の基礎でもあります。

 日本では、総務省統計局が様々な統計データを調査、分析し、年度ごとにまとめて公表しています。

 

 統計局のホームページを見ると、次の記載があります。

私たちの使命 何を目指しているのか

 統計は、『社会の情報基盤』として、今日の行政運営や企業の意思決定などに必要不可欠なものとなっており、統計なくして国家などの運営は成り立ちません。

 総務省統計局は、我が国の社会経済情勢を把握する国勢の基本に関する統計を通じて、政府統計の中核的機関としての役割を果たしています。

 私たちは、社会経済情勢の変化に対応した有用で信頼される統計を作成し、適時的確に提供することを通じて、行政施策の企画・立案・評価、国民・事業者などの合理的な意思決定や学術発展を助け、国民生活の向上や社会経済の発展に更に貢献することを目指しています。」

生活保護基準の引下げ訴訟で明らかになった厚労省の「物価偽装」

 2013年8月に、生活保護基準が平均6.5%、最大10%も一気に引き下げられるという制度変更がなされました。過去最大の引下げでしたが、その実質的な検討期間はわずか4か月間程度でした。このときの引下げの最大の根拠とされたのが、デフレ調整と呼ばれるもので、要するに、生活保護世帯が購入する生活用品の物価が下がったからその分だけ保護費を削るというものでした。

 しかし、生活保護世帯にとって本当に物価が下がったのか、この点が重要な問題となりました。

 詳細は省略しますが、私たち原告・弁護団は、厚労省が「物価偽装」を行い、過度に物価が下がったように見える誤った数値を作出したと主張していました。

 最高裁判所は、2025年6月27日、物価偽装とまでは言っていませんが、厚労省のいうデフレ調整が不合理であることを認め、2013年8月の生活保護基準引下げは生活保護法に違反するものであったと認めました。

 「統計」を偽装すると、政策判断も不合理になるのは明白です。一方で、国は、自分の都合の良いように「統計」を偽装したいという誘惑にもかられやすいものです。私たち国民が国の姿勢を常にみておく必要があるゆえんです。

 ちなみに、生活保護基準引下げに関して行われた「物価偽装」については、この問題を早い段階から指摘されていた元中日新聞編集委員でフリーライター・社会活動家の白井康彦さんのHPをぜひご覧ください。

トランプ大統領が「統計」を支配する!?

 2025年8月1日、アメリカの雇用統計が大幅に下方修正されたという「統計」の公表を受け、トランプ大統領は当該データが政治的に「操作された」と主張し、労働統計局長の解任を命じた、という報道がありました。

  とんでもない話です。

 大統領にとって都合の悪い「統計」データが公表されたので、その「統計」をまとめた国の担当責任者が解任されるとなると、今後は、大統領に都合のよい「統計」結果しか公表されないということになりかねません。

 これは客観的なデータの公表ではなく、「大本営発表」そのものです。

 日本では、裁判所が「人権の最後の砦」としての役割を果たし、誤った「統計」の使い方を断罪しましたが、アメリカの今後はどうなることか。アメリカの政策は日本にも大きく影響するため、今後も注目が必要です。

ChatGPTに聞いてみた

 最後に、お遊びで、ChatGPTに、次のような質問をしてみました。ChatGPTからの回答とあわせてご紹介します。なお、ChatGPTの回答内容についての真偽は不明です。参考文献も、実際に存在する文献であるかどうか、引用が適切かどうかはまったくわかりません。あくまでも記載内容の真偽は不明という点にご留意ください。

 Q:ナチスドイツは国家の統計情報を意図的に操作していたか

以下、ChatGPT(OpenAI)からの回答を引用———————————-

ChatGPT:

はい、ナチス・ドイツは国家の統計情報を意図的に操作・捏造していたと考えられています。特に、政治的・社会的・経済的な正当性を強調するために、統計はプロパガンダの道具として利用されました。

以下、代表的な事例を挙げて説明します。


■ 1. 失業統計の操作

ナチス政権は、1933年に政権を掌握した直後から「失業者の大幅削減」を成果として宣伝しましたが、実態とは異なる点が多くあります。

  • 実際の操作例:
    • 公共事業(アウトバーン建設など)に参加させた人々を「就労者」としてカウント。
    • 青年団(労働奉仕団)への参加者や強制労働者も「失業者ではない」として統計から除外。
    • 女性の家庭回帰政策によって職場を離れた女性は失業者にカウントされなかった。

→ これにより、表面的には「失業率が激減」と見える数字を作っていた。


■ 2. 経済成長・生産高の誇張

軍需産業の拡大や自給自足政策(四カ年計画)の成果を強調するために、工業生産や農業生産の数字も誇張された形で報告されることがありました。

  • GDPや成長率なども「統計の見せ方」によって成功を演出。

■ 3. 人種・民族統計の恣意的利用

ナチスは「ユダヤ人問題」を「統計的に証明された脅威」として描こうとしました。

  • 例:
    • ユダヤ人の経済的影響力を過大に見せる統計(銀行やメディアに占める割合など)。
    • 人種分類を統計に組み込むことで、政策的な迫害の正当化材料に。

■ 4. 戦時中の戦果・損害統計の隠蔽・改ざん

第二次世界大戦中、軍事的な損害や経済の困難についても国民には知らされず、戦果を強調し敗北や犠牲を隠蔽する統計が流されました。


■ 背景:統計局とプロパガンダの連携

ナチス政権下では、**統計局(Reichsamt für Statistik)**も独立性を失い、国家の方針に沿った数字を作る機関と化しました。ゲッベルスの宣伝省と連携して、政策やプロパガンダの根拠として都合の良いデータが作成されました。


■ 学術的評価

現代の歴史学や統計学では、ナチス時代の統計は

  • 「部分的には信頼できるが、特に政治目的に関連する統計は信頼性が低い」
  • 「操作やバイアスの混入がある前提で批判的に扱うべき」
    とされています。

参考文献(日本語・英語):

  • 阿部良男『ヒトラー全記録』(柏書房)
  • Richard J. Evans, The Third Reich in Power(2005)
  • Götz Aly & Karl Heinz Roth, The Nazi Census(2004)

あなた:

日本で、2012年から2018年まで続いた好景気の期間中に、統計情報の算出方法に変更があったものがあるか。

ChatGPT:

はい、日本では2012年から2018年の間、いわゆる「アベノミクス景気」と重なる時期に、いくつかの主要な統計について算出方法の変更(基準改定や手法変更)が行われています。これは統計の国際基準への整合性向上や精度改善が目的とされていますが、結果として景気の見え方や数値が上方に修正されるような影響があったものもあります。

以下、代表的なものを紹介します。


1. 経済成長率(GDP統計)の算出方法の変更

● 変更内容:

  • 2016年12月:GDPの算出において、国際基準(SNA: System of National Accounts 2008)に準拠するよう大幅な改定が実施。
  • 研究開発投資などがGDPに含まれるようになり、名目GDPが大幅に上方修正。

● 影響:

  • 改定前と比べて、名目GDPが約30兆円(約5%)増加。
  • これにより、「アベノミクスでGDPが成長した」とする根拠がより強調される結果に。

2. 毎月勤労統計(賃金統計)の不正・不備(≠単なる算出変更)

● 概要:

  • 厚生労働省の「毎月勤労統計」で、2018年まで長年にわたり不適切な抽出調査が行われていたことが発覚
  • 本来、全数調査をすべき東京都の大規模事業所で、実際には3分の1程度しか調査していなかった(2004年から)。
  • このため、特に2018年ごろの賃金上昇率が実態よりも高く算出されていたと疑われた。

● 影響:

  • 実質賃金や雇用情勢の正確な評価に支障。
  • 失業給付や労災給付の金額にも影響し、後に追加給付が必要に。
  • 2019年に「統計不正問題」として社会問題化。

3. 消費者物価指数(CPI)の基準改定

● 概要:

  • 総務省は5年ごとにCPIの基準年や品目構成を改定
  • 2016年には基準年を2010年から2015年に変更。
  • これにより、携帯電話料金の低下などがより強く反映されるようになった。

● 影響:

  • 消費者物価の伸び率が鈍化して見えるようになった時期もある。

まとめ

統計名変更内容影響
GDP統計2016年に国際基準(SNA2008)に対応名目GDPが30兆円超増加(景気拡大感の演出)
毎月勤労統計抽出方法に長年の不正(2004~2018)賃金上昇が過大評価され、追加給付も必要に
CPI(物価指数)2016年基準改定一部で物価上昇が抑えられて見えるように

留意点

これらの変更は、必ずしも「意図的な景気の粉飾」だったとは限らず、多くは国際基準への対応や制度的な更新として正当性を持っています。ただし、政治的なタイミングと重なったり、修正が景気判断に有利に働いた点は、当時も一部のメディアや野党から疑問視されました。


法律相談Q&A

法律相談Q&A

法律相談
予約はこちらに

お気軽にお問合せください

092-721-1211

※お掛け間違いのないようにお願いします。

平日9:30~17:00
土曜9:30~12:00


平日、土曜日午前中
毎日実施中

初回法律相談予約専用Web仮予約はこちら