弁護士記事

2025年11月17日(月)

台北に視察に行ってきました!

 本年10月に台北に台湾の男女平等参画状況の視察に行ってきました。台湾全体の弁護士会、台北弁護士会、行政院性平等局や、性平等を推進する団体などを回ってきました。台湾全体の弁護士は、中高年層になるほど男性比率が高いそうですが、全体の女性割合は38%で、若年層(30歳以下)では、男女差はほとんど無いそうです。理事会における女性比率は約44%で、女性の全体比率を上回り、現理事長は女性です。日本より進んでいるという印象でした。
 社会に目を向けてみると、2019年にはアジアで初めて同性婚を合法化(特別法を作って対処)、2023年には性平等3法を改正して、学校では、性別平等教育法により、しっかりと性平等を子どもたちに教え込み、労働の分野でも男女平等を図るべく、性別平等工作法を整備し、セクハラの防止を目指して、性騒擾防治法を策定して、セクハラを犯罪と捉えて、厳しく処罰することによって無くしていこうと考えているそうです。日本では、政治家のセクハラが問題になったとき、「セクハラ罪という犯罪はない」から、許されるかの発言をした政治家がいましたが、台湾では,今、セクハラをすると刑事罰を受けるようになったようです。日本でいう「労働法」に当たる法律でも男女平等賃金を定めているようで、賃金本体(手当、とか企業の福利厚生とかは除いて)において男女不平等はないそうです。何故、そのような法律を制定することに国民が納得できているか、という点においては、2024年には、国会議員の女性比率は約41%だし、性別平等を教育により国民全体に広げる「法律」も作っていることが大きいのだろうと思いました。
 日本を見てみると、教育の分野において、表面上・形式的に男女不平等が横行している訳ではありませんが、男女の違いを学ばせようという包括的性教育は取り入れられていません。国会において、参議院ではやっとこさ女性比率が上がってきたところ、連立政権は衆議院の議員定数を削減しようとし、しかも、比例区選出議員数がターゲットと報道されています。参議院の女性比率が上がってきたのは、名簿整備という政党の努力もあり比例代表区において女性が何とか増加した点も否めないのでは、と思うのに、衆議院でそこを減らすことになれば、参議院に大きく遅れを取っている女性比率上昇の機会は益々遠のいてしまうのでは、と心配します。経済分野においても、経済界が女性活躍(グローバルも視野に入れ)のため「選択的夫婦別姓制度の早期導入を」という意見表明をしているのに、目処がたっていません。古き良き家族制度を守りたいとの理由かもしれませんが、人権侵害を継続してまで、古き良き家族感を他人に押しつけるのは、どうなのか、と思います。夫婦同姓が古き良き家族感を醸成するという人は夫婦同姓を選べばいいのです。
 台湾の「同性婚制度」は、反対する人たちに配慮して、家族法での平等化ではなく「特別法」という形をとったそうです。それがいいこととは思いませんが、ならば、日本でも、「通称使用が可能」に加え、特別法で、事実婚の「戸籍届出」をした夫婦は、相続、税務社会保障等の分野において、法律婚をした夫婦と同等の権利・義務を有する、という「特別法」でも作って貰いたいです。
 2025年(令和7年)6月に「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律」が成立して、2028年4月から施行されるので、遺族年金受給における男女差別は無くなりますが、社会保障・税の分野で「寡婦(夫)」要件(註:一度「法律婚」をして死別・離別をして「独り者になった」という要件)の存在で差別が完全に無くなるわけでもないです。
 今般、折角日本で初めて女性が総理大臣になったんです。心の底から「頑張れー!」とエールを送りたい。しかし、この台湾の状況と比べて、男女平等推進に逆行するような政策ばかり取られては、応援する気持ちにいまいち熱が入りません。

法律相談Q&A

法律相談Q&A

法律相談
予約はこちらに

お気軽にお問合せください

092-721-1211

※お掛け間違いのないようにお願いします。

平日9:30~17:00
土曜9:30~12:00


平日、土曜日午前中
毎日実施中

初回法律相談予約専用Web仮予約はこちら

カテゴリー

弁護士紹介深堀 寿美

深堀寿美 弁護士

弁護士登録:1993年

相談者・依頼者が困っておられる内容の原因究明に務め、解決に必要な法的手続その他行政手続のご提案等ができるよう務めます。何でもご相談下さい。