星野圭 弁護士記事

2025年4月24日(木)

暮らしに役立つ(かもしれない)判例のご紹介-「労働時間」とは

「判例」というのは、厳密には、最高裁判所が判断した法的な規範部分のことをいいます。

ただ、日常用語としては、裁判所の判断全般のことをいうことが多いかなと思います。

私はこの弁護士記事ではコラム的なことを書くことが多いのですが、たまには判例の紹介をと思い、日常生活にも役立ちそうな判例を紹介いたします。

 

■「労働時間」とは何かを明確にした判例
 最高裁第1小法廷 平成12年3月9日判決 三菱重工業長崎造船所事件

 

【事案の概要】
会社が、昭和48年4月及び6月に就業規則を変更し、作業服や安全衛生保護具等の着脱等の行為を所定労働時間外にするよう義務付けたことに対し、労働組合員である原告が、それらに要する時間は労働基準法上の労働時間であり、労働基準法32条(法定労働時間)に違反するとして、割増賃金の支払いを求めた。

 

【最高裁の判断】

1 労働基準法上の労働時間についての考え方
「 労働基準法(昭和六二年法律第九九号による改正前のもの)三二条の労働時間(以下「労働基準法上の労働時間」という。)とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい、右の労働時間に該当するか否かは、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものであって、労働契約、就業規則、労働協約等の定めのいかんにより決定されるべきものではないと解するのが相当である。」

 

2 当該事案におけるあてはめ部分
⑴ 午前の始業時刻前に、所定の入退場門から事業所内に入って更衣所等まで移動すること、午後の終業時刻後に、更衣所等から入退場門まで移動して事業所外に退出すること、これらの移動時間は会社の指揮命令下に置かれたものと評価することができないから労働時間には該当しない。
⑵ 原告らは、会社から、実作業に当たり、作業服及び保護具等の装着を義務付けられていたのであるから、作業服及び保護具等の着脱等は、会社の指揮命令下に置かれたものと評価することができ、右着脱等に要する時間は、それが社会通念上必要と認められる限り、労働基準法上の労働時間に該当する。

⑶ 原告らの休憩時間中における作業服及び保護具等の一部の着脱等については、会社は、休憩時間中、労働者を就業を命じた業務から解放して社会通念上休憩時間を自由に利用できる状態に置けば足りるものと解されるから、右着脱等に要する時間は、特段の事情のない限り、労働基準法上の労働時間に該当するとはいえない。

 

【ポイント】
最高裁の考え方のポイントは、「労働時間に該当するか否かは、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否か」という点にあります。実際には、問題となる場面ごとにこれに当たるかが争われます。
本判決では、会社がその行為を義務付けていたこと、あるいは、その行為を余儀なくされていたことが判断基準のひとつとなっています。ただし、もちろん義務付けの有無のみに限るものではなく、個別の事案ごとに検討する必要があります。

 

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星野圭 弁護士

弁護士登録:2008年

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