星野圭 弁護士記事

2025年6月30日(月)

司法は生きていた?

皆さま、最高裁判所はご存知でしょうか。

そのくらいは知っているよ、という声が聴こえました。

 

三権分立のひとつ。「立法、行政、司法」というときの司法、あるいは「国会、内閣、裁判所」というときのこの裁判所、そう、これが最高裁判所のことです。

最高裁判所のホームページにはこう書かれていました。「最高裁判所は,憲法によって設置された我が国における唯一かつ最高の裁判所で,長官及び14人の最高裁判所判事によって構成されています。」

 

では、最高裁判所はどんな裁判をしているかご存知でしょうか。地方裁判所や高等裁判所と同じでしょ?と考える方もいるかもしれません。

実は、最高裁判所は、私たちに身近な地方裁判所や高等裁判所とは全然違います。事案の具体的な内容は見てもらえず、憲法違反があるか、法律の解釈が間違っていないかなどの法律論が判断対象になっているという、まあまあ特殊な裁判所です。

と、ここまではどうでもいい前置き。

 

 

2025年6月27日、最高裁判所第三小法廷は、全国各地で繰り広げられている生活保護基準引下げ違憲訴訟に関して、生活保護利用者側を勝訴させる画期的な判決を出しました。

社会保障分野で、政府が国策として行った政策決定を事後的に違法と判断した異例の判決でした。生活保護の分野でも、個別の事件で生活保護利用者が勝利することはありましたが、個別事件の枠を超えた政策的な動きについては、過去の老齢加算廃止を争った裁判などのように、国側が圧倒的に有利な結果となっていました。

私も福岡訴訟弁護団に参加していますので、この裁判で最高裁がどのような判断を示すのか、期待と不安の日々を過ごしていましたが、勝訴判決に心底ほっとしました。

 

2012年12月に誕生した第2次安倍内閣は、政権復帰後、すぐに生活保護基準の最大10%引き下げを決定しました。その根拠は不明でしたが、2013年8月には実施することが決まり、おそらくその後に10%という数字の根拠が作りあげられていきました。裁判で争われたのはこの2013年8月の処分であり、裁判のなかでは、当時のずさんな政策決定プロセスが問題視されました。

最高裁が違法性を認めたことにより、政策決定プロセスの透明性確保の重要性が再確認されたことは非常によかったと思います。

 

この訴訟で最高裁判所が勝訴判決を出した後、裁判所の門前では、「司法は生きていた」という旗が掲げられました。

ん?司法が死ぬことがあるの?と疑問に思うかもしれません。そう、あるんです。司法も、わたしたち国民が絶えず監視し、おかしな判断をしたときにはそれを正すように、内外からプレッシャーをかけないと、すぐに権力に取り込まれ、死に体になってしまいかねません。

私たちとともに生きる。最高の裁判所になってもらうためにも、私たち自身が裁判所に関心をもつことが肝要です。

 

「生きていた」と再確認しないといけない今の状況も、ほんとはちょっと危ないのですが、こうやって時々、裁判所の生存確認をすることは、わたしたちの権利を守るためにも重要です。

 

皆さま、ぜひ、いろいろな裁判に関心を持っていただき、時々、司法の生存確認をされてください。

 

 

法律相談Q&A

法律相談Q&A

法律相談
予約はこちらに

お気軽にお問合せください

092-721-1211

※お掛け間違いのないようにお願いします。

平日9:30~17:00
土曜9:30~12:00


平日、土曜日午前中
毎日実施中

初回法律相談予約専用Web仮予約はこちら

カテゴリー

弁護士紹介星野 圭

星野圭 弁護士

弁護士登録:2008年

まずはご相談ください。熱意と誠意をもって取り組ませていただきます。