1.はじめに
前回は、離婚にはいくつか方法があることと、それぞれの方法をとる場合の注意点についてお話をしました。ご興味がある方は2026年2月15日の弁護士記事をご覧ください。
今回は、裁判離婚ができる条件(民法で定められている離婚事由)についてお話したいと思います。前回の記事を見ていただいた方は、「裁判離婚は全体の2.2%しかないのだから、ほとんどの人は関係ないじゃないか!」と思われるかもしれません。
しかし、協議離婚の場合であっても、離婚することに納得しない相手方に対して「あなたが反対をしても、裁判になれば離婚が認められる。」と言えるのであれば、相手方もやむを得ず協議離婚に応じるということは実務上良くあります。つまり、裁判離婚ができる条件があれば、協議離婚をスムーズに進めることができる可能性が高まります。逆の立場からみると、相手から離婚を求められた場合に、協議離婚に応じざるを得ないかどうかを判断する目安になるともいえます。
そこで、今回は裁判離婚ができる条件のうち、「不貞行為」と「悪意の遺棄」についてお話をすることにします。
2.不貞行為(民法770条1項1号)
⑴ 不貞行為とは?
不貞行為とは、夫婦間の貞操義務に反する行為のことです。夫婦は一夫一妻制に基づく貞操義務があり、これに違反する行為は離婚事由となります。
典型的には、一方の配偶者が、他方配偶者以外の異性と肉体関係を持つこと、他方配偶者以外の異性と同棲することなどがあります。いわゆる姦通や不倫といった行為で、もっと簡単に言えば「浮気」です。
もっとも、「一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。」(民法770条2項)とされていますので、姦通や不倫があれば直ちに裁判離婚が認められるわけではないことには注意が必要です。
⑵ 夫婦関係破綻後の不貞行為で裁判離婚は認められる?
離婚はしていないが夫婦が別居し夫婦関係が破綻していることが明らか場合に、一方の配偶者が他の異性と性的関係を持つようになったら、裁判離婚は認められるのでしょうか。
実務上は、性的関係を持ったことが夫婦関係の破綻と関係がなければ、裁判離婚は認められないと解されています。
⑶ 不貞行為をした配偶者による離婚請求は認められる?
姦通や不倫をして夫婦関係破綻の原因を作った者(有責配偶者)からの離婚請求は、認められるのでしょうか。
みなさん驚かれるかもしれませんが、最高裁判所は、原則として離婚請求を認め、例外として否定される場合もあると判示しています。ただし、最高裁判所は、離婚請求を肯定する要件として以下の3つを挙げており、請求が認められる場合を相当厳格に制限しています。
【有責配偶者からの離婚請求を肯定するための3要件】
①夫婦の別居が当事者の年齢・同居期間との対比において相当長期間に及ぶこと
②夫婦間に未成熟子が存在しないこと
③相手方配偶者が離婚により精神的・社会的・経済的に極めて過酷な状態に置かれる等離婚請求を認めることが著しく社会正義に反する特段の事情がないこと
簡単にいうと、①夫婦の別居が相当長期間(5年以上が目安)であり、②夫婦間に親が面倒をみなければならない子供がおらず、③有責配偶者でない配偶者が離婚によって過酷な状態に置かれないことなどが認められるのであれば、有責配偶者からの離婚請求が認められるとされています。なお、親が面倒をみなければならない子供には、大学生など18歳以上の成人であっても働いておらず親からの援助が必要な子供も含まれます。
3.悪意の遺棄(民法770条1項2号)
⑴ 悪意の遺棄とは?
「悪意の遺棄」の「悪意」とは、自分の行為によって夫婦生活が破綻しても構わないと思っていたこといいます。また、「遺棄」とは、同居拒否や、夫婦が互いに助け合わないことをいいます。民法は、夫婦は同居し互いに助け合わなければならないと定めていますので(民法752条)、「悪意の遺棄」を離婚事由の1つとしています。
典型的には、一方の配偶者が、他方配偶者を自宅に置き去りにしたまま帰宅しない場合や、他方配偶者を自宅から追い出した場合などがあります。
⑵ 生活費の不払いは悪意の遺棄?
同居をしているが一方の配偶者が生活費を渡さない場合は、悪意の遺棄といえるのでしょうか。
民法は、夫婦は婚姻から生じる費用を分担すると定めています(民法760条)。そのため、一方の配偶者が生活費を渡さないという場合は、同居拒否や、夫婦が互いに助け合わないことと同様に悪意の遺棄にあたるとされています。
⑶ 相手の暴力に耐えかねて家を出て行った場合は?
同居拒否は悪意の遺棄にあたるといいましたが、相手の暴力に耐えかねて家を出て行った場合でも悪意の遺棄になるのでしょうか。
民法は、夫婦は同居し互いに助け合わなければならないと定めていますが(民法752条)、正当な理由がある別居を認めていないわけではありません。相手の暴力に耐えかねて別居をした場合は、正当な理由がある別居といえますので、悪意の遺棄には当たりません。
そのため、有責配偶者からの離婚請求の場合と異なり、家を出て行った側からの離婚請求は、特に厳格な要件はなく認められています。
4.最後に
次回は、裁判離婚が認められる条件のうち、「3年以上の生死不明」と「その他婚姻を継続し難い重大な事由」についてお話いたします。
特に「その他婚姻を継続し難い重大な事由」については、より多くの具体例を挙げながらお話しする予定ですので、楽しみにしていてください。