弁護士記事

AIと紙と万年筆

 私は、万年筆と紙の愛好家です。といいますか万年筆と紙がなければ、仕事ができません。依頼者との打ち合わせにおいては、依頼者から聞き取った内容を万年筆で紙に書きとって、そのあとこれを元にパソコンで文章にまとめていく作業をします。また、仕事を離れたいわゆる自分の時間に本を読むときも、ページをめくりながらその要点をノートに筆写していく作業を経なければなかなか本の内容が頭に入ってこないという少々困った癖をもっているので、やはり万年筆と紙は欠かせません。

 このように極めてレトロ調一色の私にとって、最近のAIの進展ぶりは半ば脅威です。私の周囲の有能な弁護士たちは、既にAIの有用性を見抜いて、弁護士業務にAIを積極的に活用しているようです。例えば、依頼者との打ち合わせにおいては、依頼者の発言を録音し、これをAIに読み込ませて一定の文章にしたうえで、これに手を加えて文章を完成させるなどのこともしているようです。当然、スピードアップは間違いありません。そのほかにもAIの活用方法はたくさんあるようです。弁護士の集まりの休憩時間などに、AIに詳しい弁護士同士が自分はどのようにAIを活用しているかを情報交換している際に、その横で聞き耳を立てて話の内容を聞いているのですが、AIを使ったことのない私はただただ恐れ入るしかありません。

 正直に言って、私はAIが人間の存在に悪影響を及ぼすのではないかとの猜疑心をもっており、AIと人間との関係について、この間いくつかの論考を読んでみました。その中のある論考においては、AIを単に批判的に見てその開発に異を唱えるのは現実的ではない。むしろ、AIの特性を明らかにし、人間の知能や身体を含んだ経験と行動の特性を自覚して、人間がAIと共存して人間であり続けるための条件を整える方が建設的であると書かれていました。なるほどと思います。だた、その同じ論考は、次のように締めくくっています。AIには信頼できる安全性が絶対にないことを悟るべきであり、「個人としても社会的としても、人間による検証のないAIの判断をそのまま受け入れることはしない」というのが、人間がAIと共生を続けるための最低限の条件である、と。私のAIに対するスタンスも、当面、この論考が示している基本的スタンスを取ろうと思っています。仕事にAIを可能な限り取り入れながら、最終的にはやはり万年筆と紙を捨て去ることはしないつもりです。

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弁護士紹介梶原 恒夫

梶原恒夫 弁護士

弁護士登録:1989年

主要な取組分野・フィールドは,「労働」をキーワードとする各種事件です。また,業務に関連して関心のある領域は,法哲学,社会思想,社会哲学です。常に勤労市民と一緒に活動していける弁護士でありたいと願っています。個別事件を普遍的な問題につなげながら。