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労働事件法律相談Q&A労働:解雇・雇い止め

有期労働契約の「雇止め」などに関する基礎知識

有期であることを理由とする不合理な労働条件の禁止

私は、有期労働契約で働いていますが、会社から「有期なので正社員と労働条件が違うのは当然だ。」と言われました。有期だからというだけで、どのような労働条件の差別があっても許されるのでしょうか。

ア パート有期法8条(不合理な待遇の禁止)という条文が存在しています。

「不合理な待遇の禁止」について規定したパート有期法の第8条は、事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者の基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、当該待遇に対応する通常の労働者の待遇との間において、当該短時間・有期雇用労働者及び通常の労働者の A)業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下「職務の内容」という。)、B)当該職務の内容及び配置の変更の範囲 C)その他の事情のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはならない、と規定しています。

イ パート有期法8条の立法趣旨

ハマキョウレックス事件最高裁2018年6月1日判決は、今回の法改正でパート有期法8条に吸収されることになった旧労働契約法20条の趣旨について、「同条は、有期契約労働者については、無期労働契約を締結している労働者と比較して合理的な労働条件の決定が行われにくく、両者の労働条件の格差が問題となっていたこと等を踏まえ、有期契約労働者の公正な処遇を図るため、その労働条件につき、期間の定めがあることにより不合理なものとすることを禁止したものである。そして、同条は、有期契約労働者と無期契約労働者との間で労働条件に相違があり得ることを前提に、職務の内容、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情(以下「職務の内容等」)を考慮して、その相違が不合理と認められるものであってはならないとするものであり、職務の内容等の違いに応じた均衡の取れた処遇を求める規定であると解される。」と判示しています。同判決の示したこの立法趣旨は、パート有期法8条の立法趣旨を考える際に参考にされるべきです。そして、パート有期法8条は均衡だけではなく、不合理な相違を認めないという点で「均等及び均衡処遇」を求める趣旨の規定であると解されます。

ウ パート有期法8条違反の効力

同条は、強行法規であり、同条に違反する就業規則や法律行為は無効となります。違反した場合は不法行為にも該当し、損害賠償の対象となります。

ただ、いわゆる補充効(就業規則の欠落部分を補う効力)は、判例・通達では否定されています。しかし、就業規則の合理的解釈により、短時間・有期雇用労働者に対しても当該就業規則が適用されるとの結論を導ける場合もありえます(例えば、就業規則で「○○手当を支給する。但し、短時間・有期雇用労働者には支給しない。」という規定がなされている場合には、その但書が8条違反で無効となれば、短時間・有期雇用労働者に対してもその○○手当が支給される、との解釈をとることもできるというべきです。

エ パート有期法8条の存在意義

旧労働契約法20条を吸収する形で作られたパート有期法8条は、短時間労働者(パートタイマーなど)及び有期労働契約の労働者の労働条件が正社員(期限の定めのない契約)との労働条件の不合理な格差を違法とする画期的な立法であるといえます。労働者としては、この条文を活用して、短時間労働者(パートタイマーなど)及び有期労働契約の労働者の不合理な労働条件を是正するよう裁判も含め積極的に取り組むべきです。なお、この条文では「無期転換社員」(労働契約法18条の規定により無期に転換した社員)には適用されません。

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