1970年代に角川書店が、このキャッチコピーを用いて映画公開に合わせて原作文庫を大量に売り出して、『犬神家の一族』や『人間の証明』などの大ヒットを生み出しました。本当は、「見る」でなく「観る」とすべきなのでしょうね。
見てから読む場合、映画では描き切れない細かな設定や背景や心理描写がわかる喜びがあります。読んでから見る場合、自分が想像した情景と、監督が表現した映像の違いを楽しめます。ミステリーの場合は、特に結末を知った上で、伏線がどう張られていたかを確認できます。
いずれにしても、原作と映画とは別物であり、原作そのままに忠実な映画というのは、希少なようですね。映画製作者は原作をモチーフにして自分の創作をしていくものなのでしょう。
映画『シャイニング』(1980年、S・キューブリック監督)と原作小説(1977年、S・キング著)は、テーマ、結末、登場人物の描写などが大きく異なります。映画は「人間の内なる狂気と恐怖」を描いていると言われ、一冬の間に閉鎖をするホテルの管理人として妻子と共にホテルに住み込むジャック(ジャックニコルソンが演じます)がホテルに巣食う悪霊に取り付かれていき、狂気の果てに家族を追い回します。双子の少女、巨大な「生け垣の迷宮」といった印象的な映像は映画ならではのものです。これに対して、原作は、「家族の崩壊と再生(悪霊との対決)」を描いていると言われており(私は子どもが父親っ子という描写にうるうるきます)、キングは、映画版を「原作の核心である家族の温かみや葛藤を無視している」という不満を表明して、1997年には自ら脚本を手がけたテレビドラマを制作しました。映画と原作本はお盆の時期にお薦めです。
今、BS12 トゥエルビで毎週月曜午後8時に『ヨルガオ殺人事件』が、放映されています。原作者アンソニー・ホロヴィッツ自身の脚本によるドラマということもあって原作にほぼ忠実と言えるでしょう。主人公スーザンのもとに、失踪した娘探しをその両親が依頼しに来る。その娘は、かつてスーザンが担当した作家アラン・コンウェイの小説『愚行の代償』の中に8年前の殺人事件の真相が隠されていると気づいた直後に姿を消しました。小説の中に失踪のヒントが隠されていると思った夫婦から依頼されたスーザンは謎を解き明かすことができるのか・・。前作『カササギ殺人事件』と同様、現実の事件と作中の推理小説の謎が交差する構成が特徴ですが、前作のドラマ版では、スーザンが愛車MGBロードスターで移動中に劇中作の探偵アティカス・ピュントの乗る車とニアミスする等のお遊びシーンが盛り込まれていましたが、本作では謎解きに悩むスーザンの前にピュントが現れて助言をするというシーンもありました。また、劇中作は現実の主人公をモデルにしている(と言っても性悪の作者アランによって歪曲されています)という設定ゆえに同じ俳優が現実と劇中作での2役を演じる(しかも性格が真逆であったりする)などの遊びもあります。今日の月曜日が第5回、次週第6回が最終回です。
なお、アンソニー・ホロヴィッツの作品はこの2作品も含めて2019年度~2022年度の4年連続で『このミステリーがすごい!』第1位を獲得という金字塔を打ち立てています。彼が現役で創作している時代に生き合わせている喜びに浸っています。彼のもう一つの進行中のホーソーン&ホロヴィッツシリーズ第6弾となる『命取りのエピソード』(創元推理文庫)が2026年9月10日に発売予定だそうです。

