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弁護士記事深堀 寿美:その他

2026年10月19日(月)

映画「ファースト ボイス」を観て

深堀 寿美

現在、劇場で映画「ファースト ボイス」が上映中です。この映画は、日本で初めて実際に裁判で「セクハラ」が争われた事件である「福岡セクシュアル・ハラスメント裁判」に着想を得た、と宣伝されているように、ある女性が、性別を理由に理不尽な嫌がらせを受け、職場での居場所を失い、退職を余儀なくされたと会社と上司に対して損害賠償の訴えを起こし、勝訴に至る過程が描かれたものです。1989年に提訴されて、“セクハラ”という言葉がその年の流行語大賞を取るなどして、「セクシュアル・ハラスメント(セクハラ)=性的な嫌がらせ」というものの存在を世に浸透させるきっかけとなりました。ある行為に「名前を付ける」というのは大事な事で、それまで、職場で女性に対して行われていた、多くの女性が何だか不快に感じる、モヤモヤとした存在が、そのネーミング以降、はっきりと「嫌がらせ=ハラスメント」として認知され、排除されるべきものと認識されるようになりました。
 この”セクハラ”に端を発し、職場での様々な嫌がらせに対しても対策を講じるべきとして雇用主が被用者に関して取るべき行為の指針などが示されてきました。本年10月1日からは、「改正労働施策総合推進法」が施行となりました。パワーハラスメントについて、指針(既存)が改正になり、労働者を守るためのカスタマーハラスメント対策が努力義務から法的な措置義務に格上げになり、セクシュアル・ハラスメントは、未だ、その雇用主の従業員になっていない、求職者やインターン等に対しても防止措置義務が新設されるなど、です。ここまで”ハラスメント”に関して、労働者保護が進んでくる切っ掛けになったのが、かの福岡セクシュアル・ハラスメント裁判だったのです。そのような経過を考えると、最初に声を上げた元従業員の原告と、その訴えを、訴訟という形にし、映画では「負ける、負ける」と連呼されている損害賠償請求事件を見事勝訴に導いた弁護団は、本当に立派だったと思います。
私は、判決が出た時、丁度、福岡の裁判所で「司法修習生」をしていて、着想を得たという事件の弁護団の弁護士の皆さんのお顔も、それから、勝訴判決を出した担当裁判官のお顔も拝見したことがあり、映画で、「ふんふん、この俳優さんをキャスティングするのね」などとエンターティンメント部分も楽しめました。
 映画の中では、原告の代理人弁護士自身も「このような裁判は(先例もなく)、負ける」と連呼していいて、弁護団の「頭脳明晰な弁護士」という人たちが、この劣勢といわれる日本初のセクハラ訴訟をいかに勝訴に導いていくか、ということが実は本当に素晴らしいのですが、その過程の紹介は、今後のもう少し硬派なメディアに期待したいです。
 何事も、先例がない裁判は困難な道のりを行かねばなりません。国の生活保護基準の切り下げが「違憲」だ、と主張して、それを認めさせた弁護士たち、障害者の皆さんの人生設計を国が強制したことがおかしいと主張して、「時の壁」を破った弁護士たち、国の「スクラップアンドビルド政策」の過程で「ボタ」のように捨てられそうになった炭鉱労働者の権利擁護を勝ち取った弁護士たち、他にも「先例のない」裁判を戦ってきた歴戦の強者が集うのが私たち、福岡第一法律事務所です。「福岡セクハラ裁判」の弁護団の中心的役割を担った弁護士の一人も当事務所出身です。さて、今日は、どの強者が、事務所に来られた方の相談に乗る予定でしょうかね。