山本一行 弁護士記事

2025年8月4日(月)

建設アスベスト訴訟の和解と集団訴訟

 玄人っぽい話ですみませんが、集団訴訟について。
 建設アスベスト訴訟では、この8月7日に首都圏・東京1陣、2陣訴訟の東京高裁で、8月8日に大阪2陣、3陣訴訟の大阪高裁で、主なアスベスト建材の製造、販売企業との和解が成立します。2021年の最高裁判決以降、国は責任を認め、謝罪をして、基金によって裁判を起こさなくても補償を行う制度を作りました。しかし、危険なアスベストを、十分な警告をしないまま大量に世の中にあふれさせた張本人であるアスベスト建材の製造、販売企業は、なおも責任を争い続けていたのです。そういう中、この和解は被害救済に向けての大きな前進となるものです。
 ここで、この建設アスベスト訴訟の経緯を述べ、「全国に展開した集団訴訟」という形であることの力強さを紹介したいと思います。
 建設アスベスト訴訟は当初は全国6か所で提起されました。最初の神奈川訴訟の1審判決は完全敗訴でした。続く東京訴訟1審判決で雇われていた労働者のみ国に勝訴、その次の私たちの九州1審判決で同じく勝訴してその流れを定着させたのです。その後も労働者の国への勝訴が続き、さらにはこれが広がって一人親方の国への勝訴、企業への勝訴の判決が現れてきました。だんだんとそれが増え、九州訴訟の高裁判決でそれが完全な多数派となって、最高裁判決勝利に結びついていったのです。
 私は、最初の神奈川訴訟1審判決の報告集会で「私たち後続訴訟は、敗訴というこんな事態に備えて、この後に盛り返すために提訴したのです」と挨拶をしたことを覚えています。全国で力を合わせてひとつずつ前進を勝ち取っていったのです。
 思えば、最初の石炭じん肺の集団訴訟である長崎北松じん肺訴訟も、同じように全国の力で進んでいきました。長崎北松じん肺の福岡高裁判決は、時効を大幅に認めて多くの棄却者を出し、認められた被害者の損害額も大幅に減らしたのです。しかし、これに続く郡山じん肺の時効のない和解、常磐じん肺の勝訴判決で、福岡高裁判決はおかしなものであることが明らかとなり、最高裁での逆転勝訴につながりました。
 また、筑豊じん肺訴訟や北海道石炭じん肺訴訟で、石炭じん肺について国の責任が認められたことは、全国で大いに活用されました。それまで国に勝訴することは、どの訴訟でも困難を極めましたが、筑豊じん肺訴訟では国はじん肺などを防止するために、「適時、適切」に規制を行うべきとされたのです。その後のトンネルじん肺訴訟、工場型の泉南アスベスト訴訟、建設アスベスト訴訟などで、この成果を引継ぎ、発展させて行ったのです。
一人一人の力は小さくても、ひとつひとつの訴訟の力には限界があっても、頑張れば後が続くということは大きな力になるのだと思います。

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弁護士紹介山本 一行

山本一行 弁護士

弁護士登録:1983年

石炭のじん肺訴訟にうちこんできました。その経験を生かして様々な事件に頑張りたいと思います。