毛利倫 弁護士記事

2024年6月9日(日)

相続人がいない場合(相続人不存在)でも相続財産を取得できる場合とは

1 民法で相続人は決まっている

 日本の民法の規定では,配偶者は常に相続人となりますが,配偶者とともに相続人となる人は,次の順位に従い,上位の者だけが相続人となり,下位の者は相続人にはなれません。

 第1順位は子ども(子どもが先に亡くなっていれば孫が代わりに相続),第2順位は,子どもや孫がいない場合の父母(父母がともに亡くなっていれば祖父母),第3順位は,父母や祖父母もいない場合の兄弟姉妹(兄弟姉妹が先に亡くなっていれば甥や姪が代わりに相続)です。

 これを法定相続といい,子どもや孫がいない夫婦の場合では,配偶者とともに父母または祖父母,あるいは兄弟姉妹が相続人になり,配偶者も子どもや孫もいない単身者は,父母または祖父母,あるいは兄弟姉妹だけが相続人となり,さらに,配偶者も子どもや孫もなく,父母や祖父母,兄弟姉妹もいない単身者の場合,相続人が存在しないことになります

 相続人がいない場合に備えて,事前に遺言書を必ず作成しておくべきというテーマについては,既にこの弁護士記事に書いたことがあるので,拙稿の2023年6月26日付け弁護士記事「遺言書は作成した方がいいが,でも内容にはご注意を!」https://www.f-daiichi.jp/blog/tomo_mouri/5053/をぜひご覧下さい。

2 相続人がいない場合(相続人の不存在)の法律関係

 では,遺言書も作成せずに亡くなった方に相続人がいない場合,亡くなった方の財産(相続財産)はどうなるのでしょうか。

 民法は,相続に関して,882条から1050条まで169箇条に渡って詳細な条文を置いていますが,このうち相続人がいない場合については,「第6章 相続人の不存在」という独立した章を設けて,951条から959条まで9箇条の条文を置いています。

 そして,相続人がいない場合でも,一定の場合には,相続財産を取得できることがあります。

①相続財産清算人の選任と相続債権者に対する弁済

 まず初めに,相続財産の所有者本人は既に死亡しているため,本人に代わって,相続財産を管理する人を決める必要があります。
 こうした相続財産を管理する人のことを「相続財産の清算人」といいます。

 民法は,相続債権者などの利害関係人による請求があれば,家庭裁判所は,相続財産清算人を選任しなければならないと定めています

 相続債権者とは,亡くなった方に対し,生前にお金を貸していたり,損害賠償請求権を持っていたりした債権者のことをいいます。

 相続債権者は,もし亡くなった人に相続人がいれば,その相続人に請求していくことになりますが,相続人がいない場合には,相続財産清算人に対し,自己の債権を請求していくことになります。

 家庭裁判所から選任された相続財産清算人は,相続債権者に対し,期限を定めて債権の届出をさせ,債権があることが確認できた場合には,その相続債権者に対して弁済をしていくことになります

②特別縁故者に対する相続財産分与

 相続人がおらず,相続債権者に対する弁済もする必要がないようなケースの場合,民法は,相続財産は,国庫に帰属する,すなわち,相続財産は,誰にも取得されないまま国のものとなってしまうと定めています

 もっとも,相続人ではないけれども,亡くなった方と一緒に暮らしていたり,とても親しい関係にあったりした人がいる場合,それはとても不合理で気の毒なことになります。

 仮に,亡くなった方が亡くなる直前に自分の相続財産をどう処分したいか尋ねられたとした場合,その方は,国庫に帰属させるよりは,そうした親しい関係にあった方に自分の財産を渡したいという意向を示すのが通常の当事者の意思ではないかと思われます。

 そこで,民法は,相続人や相続債権者らがいない場合において,相当と認めるときは,家庭裁判所は,亡くなった方と生計を同じくしていた者,亡くなった方の療養看護に努めた者,その他亡くなった方と特別の縁故(えんこ)があった者の請求によって,これらの者に,相続財産の全部または一部を与えることができると定めています

 これを「特別縁故者に対する相続財産の分与」といいます

 特別の縁故とは,亡くなった方と特別に深いつながりがあったという意味です。

 特別縁故者に対する相続財産分与の請求をする場合にも,まずは,特別縁故者であると主張する者が,利害関係人として,家庭裁判所に相続財産清算人の選任を求め,その後に相続財産の分与を請求することになります。

 ちなみに,私は,現在進行形の事件として,亡くなった方の親族の依頼を受けて,特別縁故者に対する相続財産分与の申立事件を手がけていますが,相続人ではない第三者が相続財産を取得する制度であるため,裁判所もそう簡単に認めてくれるわけではなく,特別の縁故があることをきちんと証拠で明らかにする必要があります。

 また,申立期間も,相続財産清算人が選任され,相続財産清算人による相続人不存在の公告手続が満了した時から3か月以内に限定されています。

 相続に関する事件は,個別の事情により専門的な法律知識が必要な場合も多いので,もし相続問題でお困りの方は,まずは当事務所に気軽にご相談ください。

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弁護士紹介毛利 倫

毛利倫 弁護士

弁護士登録:2006年

弱者救済に取り組む弁護士を目指し、マスコミから転身しました。ともに頑張りましょう!