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活動紹介障害問題

2022年12月15日(木)

「いつもの帰り道で 安永健太さんの死が問いかけるもの(監督 今井友樹)」のご紹介

弁護士:國府朋江

2007年9月25日、佐賀県で、知的障害と自閉症のある安永健太さんが警察官に取り押さえられて亡くなった事件があります。

この事件は、健太さんがいつも通っている三瀬ルベール牧場 どんぐり村(佐賀県佐賀市三瀬村)から自宅に帰るまでの間に起こりました。

自転車で佐賀市内を移動中の健太さんは、赤信号で止まっていた原付バイクにぶつかって倒れてしまいます。

通報で駆け付けた警察官は、健太さんに知的障害があるとは気づかなかったといいます。

気づかないまま、健太さんをうつぶせにとりおさえ、後ろ両手錠をし、健太さんは亡くなってしまいます。

警察官は健太さんが警察官職務執行法3条にいう「精神錯乱」の状態にあったため、「保護」したのだと主張しました。

健太さんは、自転車が原付バイクにぶつかり、警察官もサイレンを鳴らしてくるという異常な事態の中で、とても怖くて、落ち着かない様子だったと思います。健太さんは知的障害や自閉症があり、パニックになったり、自分のことをうまく言葉では表現できない状態にあったかもしれません。しかし、優しくゆっくり声をかければ落ち着いた可能性がとても高いと思われます。

私と当事務所の星野圭弁護士は、佐賀県を相手とする民事訴訟の控訴審(福岡高等裁判所)から弁護団に加わりました。控訴審からは、地元佐賀でもともと活動していた弁護士に加え、福岡の弁護士や、東京、大阪からも障害者の人権を守る活動をしている弁護士が加わって訴訟を行いました。ちなみに、地元佐賀で活動していた弁護士で、弁護団の団長は、当事務所の河西龍介弁護士のお父さんの河西龍太郎弁護士でした。

民事訴訟は残念ながら敗訴してしまいましたが、弁護団は支援者や遺族とともに、「健太さんの会」として、健太さんのような被害者を二度と出さないための活動を続けてきました。

会のホームページはこちら → 知的障害のある安永健太さんの死亡事件を考える (yasunagajikenwokangaeru.blogspot.com)

健太さんの事件を考えるシンポジウムの開催、健太さん事件を取り扱った書籍をジャーナリストの方に出版してもらう活動、健太さんが取り押さえられる根拠となったといわれる警察官職務執行法3条の改正を考える座談会の開催、警察官職務執行法3条改正に向けた意見書の作成、そして、このたび、30分の映像作品(YouTube 無料動画)を作成してもらいました。「いつもの帰り道で 安永健太さんの死が問いかけるもの (監督 今井友樹)」
 

また、この映像作品を紹介する記事をバズフィードの岩永記者が書いてくださっています。「いつもの帰り道で、なぜ知的障害がある青年が警察官に組み伏せられて命を失ったのか 支援者が事件の映画を無料公開」 (buzzfeed.com)

 

2022年8月、スイスのジュネーブで開催された国連障害者権利委員会で、日本に対し、権利条約の批准後の状況を踏まえ、総括所見が出されました。

(日本は2014年に障害者権利条約を批准し国内法として通用するようになり、その後、権利条約の求めている内容を国の中で政策としてこんなふうに実行してきたよ、と政府が報告を出すのですが、これに対しては、日弁連や障害者団体などから「ここが足りていない」などパラレルレポートという意見を出し、それも踏まえて、国連の権利委員会から日本に対し、「ここをこうしてください」と意見が出されます。それが総括所見というものです。)

総括所見の中ではたくさんのことが書かれていますが、その中の一つで、警察官職務執行法3条にもある「精神錯乱」などの心身の障害を理由とする差別的な表現を法律から廃止することを求めたのです。

総括所見の追い風も受けて、今後も健太さんのような犠牲者を出さないために、障害のある人に対する差別偏見をなくすために、健太さんの会は活動を続けていきます。

是非動画をご覧になってください。

 

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