深堀寿美 弁護士記事

2025年2月10日(月)

国連女性差別撤廃委員会への資金拠出停止問題

去る1月29日、外務省の報道官会見において、外務省は、国連女性差別撤廃委員会が日本に対する最終審査の見解で、皇室典範改正を勧告したことに対する措置として、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)に対する任意拠出金の使途から同委員会を除外することを通告したことを明らかにした、と新聞各紙が報道しました。

皇室に関わる事柄は普遍的人権基準の対象外でありCEDAWが意見をいうべきではないというのが理由のようですが、皇室に関わる事象は憲法でも法律(昭和22年1月16日法律第3号)でも定められていること、すなわち我が国全体で決めていることです。条約締約国の状況についての意見を言ってはいけない対象ではないと思います。

また、私も昨年のジュネーブの国連での状況を傍聴しましたが、何より、CEDAWを含む国連人権機関の条約締約国審査は、専門家委員会と政府、そしてNGOが意見を集約する市民社会との間で、建設的な「対話」ができることに大きな意義があります。もし、CEDAWの勧告に異論があれば、文書ででも対話ででも、理由を示し議論をもって反論する、というのが民主的な法治国家のやり方であって、いきなり、「拠出停止の通告」という行動に出るのはどうか、と思います。これは、例えば、家庭内で経済的優位にある者が、生活費の支給をちらつかせて他の構成員を支配する、自分に従わせる、というのと同じ構造で、経済力にものを言わせようとしていて、卑怯、というか、品位に欠けるやり方です。

今年2025年は北京行動綱領採択から30年、安全保障理事会決議1325号から25年など、女性の権利に関する重要な節目の年です。日本は、国際的に、法の支配や、多国間枠組みの維持を率先的に訴えていくべきリーダー的な立場にあると思うのに、ジェンダー平等を推進すべき今年の初めに、このような振る舞いをするのは、どうかと思います。
間違ったやり方は直ちに改め、異議があるなら、根拠を示して、論理的なやり方で、相応な手段をもって行う、早く、普通の民主的な法治国家に立ち返って欲しいです。

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深堀寿美 弁護士

弁護士登録:1993年

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