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弁護士記事國府 朋江:その他

2026年6月29日(月)

子どもとスマホ・SNSの時代に、親ができること

國府 朋江

サカナクションの夜の踊り子とボートレースの船首で踊る少年の映像を合わせたショート動画がミーム化しています。スーパーマーケットで中学生くらいの子があの踊りを踊っていて、中学生は当然のようにSNSを見てるよなぁと感じた出来事でした。私自身は、学生の頃はSNSなどなく、友達から教えてもらったサカナクションのアルバム・シンシロのネイティブダンサーにはまってずっと聞いていたことが思い出されます。

さて、先日、子どもが通う保育園で、子どもとインターネット、スマートフォン、SNSとの付き合い方についての講演を聞く機会がありました。

弁護士として、普段はインターネット上の誹謗中傷や写真・動画の無断投稿、個人情報流出など、「問題が起きた後」の相談に関わることがあります。

しかし今回の講演は、トラブルへの対処方法だけではありませんでした。

「そもそも、子どもが健やかに成長するために必要なものは何か」

という、もっと根本的な視点からのお話でした。

子育て中の一人の親として、そして法律家として、とても考えさせられる内容でした。


インターネットは子どもの生活の一部になっている

現在、子どもたちを取り巻く環境は大きく変化しています。

令和5年度の青少年のインターネット利用状況では、青少年のインターネット利用率は98.7%となっており、インターネットはもはや特別なものではありません。

一方で、

  • SNS上の友人関係のトラブル
  • 誹謗中傷
  • 不適切な投稿
  • 個人情報の流出
  • 出会いによる犯罪被害
  • フィッシング詐欺

など、子どもたちが巻き込まれる問題も増えています。


子どもの成長に必要な「目を合わせる時間」

講演の中で特に印象に残ったのは、スマホやSNSの問題を、単なる「利用時間」の問題として見るのではなく、子どもの発達との関係で考えるという点でした。

子どもは発達段階ごとに、身につけることに適した時期があります。

その時期に、

  • 親と会話する
  • 目を合わせる
  • 身体を動かす
  • 遊びを通じて人と関わる

という経験を積むことが大切です。

講師の先生からは、「人間は目を合わせることで安心感を得ることができる」というお話がありました。

動物の場合、目を合わせることは警戒や対立につながる場合があります。

しかし、人間は目を合わせ、表情を読み取り、相手の反応を感じながら関係を築いていきます。

スマホや動画が便利な一方で、それによって失われているものはないか。

時間、会話、静けさ、人との触れ合い。

そうしたものにも目を向ける必要があります。


「安心できる場所」が子どもの土台になる

講演では、親子の愛着形成についても話がありました。

子どもが不安や危険を感じる。

親に近づく、手をつなぐ、話しかける。

親が応答する。

子どもは安心して、また離れて活動できる。

この繰り返しが、子どもの安心感や自信につながります。

「根拠のない自信を持っている子は強い」

という言葉も印象的でした。

どんな時でも戻れる場所があるという感覚が、子どもの挑戦する力になります。


SNS時代は「被害者教育」だけでは足りない

これまでインターネット教育では、

「知らない人に注意する」
「危険なサイトを見ない」

という被害防止が中心でした。

しかし現在、子どもたちは被害者になるだけではありません。

知らないうちに、誰かの権利を侵害する側になる可能性もあります。

例えば、

  • 友達の写真を勝手に撮る
  • 許可なくSNSに投稿する
  • 面白半分で動画を拡散する
  • 個人情報を書き込む

といった行為です。

写真や動画には、肖像権やプライバシーという権利が関係します。

「撮っていい?」
「載せてもいい?」

と確認することは、単なるマナーではなく、相手の権利を尊重する行動です。


「嫌」はコミュニケーションの始まり

講演で紹介された話の中に、友達同士で写真を撮る場面がありました。

「写真撮ろう」

と言われても、断りたい理由は人によって違います。

  • 写りたくない気分の日がある
  • 以前嫌な経験をした
  • 加工されるのが嫌
  • ネットに載せられるのが不安

大切なのは、

「嫌」

と言えること。

そして、その「嫌」を受け止めることです。

「嫌」はコミュニケーションの終わりではなく、相手を理解する始まりなのだと思います。


世界でも広がる、子どもを守るための動き

こうした問題は、日本だけのものではありません。

アメリカでは、米国公衆衛生総監室が2024年、SNS利用と若者のメンタルヘルスについて警鐘を鳴らしました。

SNSを1日3時間以上利用する青少年は、不安や抑うつなどの精神的問題のリスクが高まる可能性があると指摘されています。

また、スウェーデンでは、デジタル化を進めてきた教育現場で、改めて紙と鉛筆を使った学習を重視する動きが出ています。

もちろん、デジタル技術そのものが悪いわけではありません。

重要なのは、子どもの発達段階に応じて、何を大切にするかという視点です。


日本でも「デジタル空間から子どもを守る」議論が進んでいる

日本でも、総務省の「デジタル空間における情報流通の諸課題への対処に関する検討会 青少年保護ワーキンググループ」において、青少年保護について議論が進められ、第一次報告書案が取りまとめられています。

そこでは、保護者だけに責任を負わせるのではなく、

  • 保護者
  • 学校
  • SNSなどのプラットフォーム事業者
  • 通信事業者
  • 社会全体

で子どもを守る仕組みを作ることが重要とされています。

海外でも、SNS事業者側に子どもの安全確保を求める流れが強まっています。


デジタル時代だからこそ、アナログな時間を大切に

講演を聞いて感じたのは、スマホやSNSを禁止すればよいという単純な話ではないということです。

大切なのは、

寝ること。
食べること。
遊ぶこと。
人と関わること。

子どもが身体を使って遊び、家族と話し、安心できる時間を持つことです。

デジタル機器を必要な時に使い、必要でない時には離れる。

「メディアオフ」を特別なことではなく、日常にしていく。

そのためには、子どもだけでなく、大人自身もスマホとの付き合い方を見直す必要があります。

子どものデジタル環境を考えることは、実は子どもの権利を考えることです。