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退職・解雇の基礎知識

退職届の撤回は認められるか

私は、会社の上司と日頃から折り合いが悪く、先日、口論したさいに勢いで退職届を提出してしまいました。しかし、その後、冷静になって、やはりこの会社で働き続けたいと思うようになりました。退職届を撤回することは認められるでしょうか。

辞職と退職願(合意解約)の違い

この問題を考える前提として、正確にいうと、「辞職」と「退職願(労働契約の合意解約の申込み)」の2つに分けて考えなければなりません。「辞職」とは、使用者の意向に関わりなく、労働者の側から、一方的な意思により、労働契約を終了(解約)させることです。この辞職の場合は、労働者の一方的な意思表示だけで直ちに効力が生じてしまうことから、原則として撤回ということはあり得ないことになります。これに対して、「退職願(労働契約の合意解約の申込み)」は、労働者から示された退職の意思表示(通常、「退職願」の提出)を使用者が受け入れた場合に初めて両者の労働契約関係が解消される場合です(合意解約)。ですからこの場合は撤回が認められる余地があります。

労働者がなした退職の意思表示が、実際に「辞職」と「退職願」のどちらに該当するかという判断(意思表示の性質決定)の基準は、明白とは言えません。しかし、「辞職の意思表示は、生活の基盤たる従業員の地位を直ちに失わせる旨の意思表示であるから、その認定は慎重に行うべき」であると述べる判例もあり(大通事件・大阪地裁平成10年7月17日判決・労働判例750号79頁)、従来の裁判例の多くは、原則として「辞職」ではなく、撤回の余地のある「退職願」であると判断しています。

退職願の撤回が認められる要件

退職願の提出は、労働者側からの労働契約の合意解約の申込みと解されますから、使用者がこれを受理して承諾すれば、合意解約の効力が生じてしまい、原則として撤回は許されないことになります。退職願を人事部長が受理したことにより合意解約の承諾がなされたものと判断して、この受理後の撤回が許されないとした最高裁の判例もあります(大隈鉄工所事件・最高裁昭和62年9月18日判決・労働判例504号6頁)。このように退職願の撤回は、受理された後は厳しい状況にありますが、退職願の撤回を認める裁判例もありますので、万が一、退職願を提出してしまった後でも諦めずにまずは直ちに弁護士に相談してください。

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